夜明けを待ちながら

自宅待機中

草餅

ふ、と
今日はバスで行ってみよう、って思ったの。
ぶり返してきた冬が、やっと溶け出すような春の日で。
あら、
このバスは小学校に行くときに乗っていたやつかしら
って思ったときに
毎日、ランドセルをしょった私の前を歩いて
バス停に連れて行ってくれた、
あなたを思い出したの。

雨の日も、暑い日も、寒い日も、
いつも、あの橋を渡って、
前を歩いてくれたね。

バスの窓から、キラキラな春の日差しと
風にそよぐ桜の花びら。
今日は、そうだ、その日だったのか、と
静かに、静かに
涙が出たの。

ごめんね、
お線香をあげないで家を出たこと。
ごめんね、
その日だって忘れていたこと。
ごめんね、
あの頃毎朝通ったバス停の場所が、思い出せなかった。
ごめんね、
を、
伝えたい。
ありがとう、
を、
伝えたい。

草餅を買って帰ろう、と
バスの席で心に誓ったのに、
あの和菓子屋もなくなってしまった今年は
私はどうやってあなたに
ありがとうを伝えたらいいのでしょうか。

大好きだよ。
大好きだよ。
大好きだよ。