夜明けを待ちながら

自宅待機中

夜明けを待ちながら、100年前に思いを馳せて

ハイブランドのなにかを持つことにほとんど興味は持たずに暮らしてきたのですが

ふと思い立ったのです。

「ゲランのミツコが欲しい」

正確にいうと、

「ゲランのミツコのあの香水瓶が欲しい」

と。

 

鬱々とした日々は続き、

ストレス発散にカフェーでアフタヌーンティーも出来ない今日この頃。

はじめてゲランの店頭に行って、

「香水が欲しいのですが」

と言った、お金持ちでもない女に

丁寧に接客してくださった青いアイシャドウのお姉さんが

色々試して、結局やっぱり

「ミツコをください」と言った私に

 

「一生の香りになるかもしれませんね」

 

とおっしゃってくださった。

いま、私の手元にあの瓶がある。

美術館で見たあの瓶が、

私の手のひらの中で、いい香りを発して、

それがなんとも、100年前の世界へとトリップさせてくれるような

オールドファッションでいて

古臭くなくて

少女の頃に憧れた、大人の女性の香りなのです。

 

思えば、背伸びをしたい高校生だった頃、

初めて行った海外の空港で、

お土産用の小瓶セットで買ったのはゲランの香水でした。

免税店じゃないお店で香水を買ったのは、

たぶん、片思いしたあの彼がいつも使っていたユニセックスの甘い香りを

デパートで買ったのが初めてでした。

香りはいつも、一瞬で思い出のあの日に帰してくれます。

 

逆さのハートのガラスの瓶。

凛とした100年前の大和撫子のエトランゼ。

100年後も、生き残っていてくれて、ありがとう。