夜明けを待ちながら

自宅待機中

夜明けを待ちながら、朝の来ない人を思い出す

このお仕事を始めてから暫く経つ。
お仕事で関わった方々は沢山いて、
そして、
もう新しい朝に出会えなくなった人たちも
その中に、いて。
だけど私のお仕事は、変わらずに続いていく。
アンハッピーなニュースの直後に無神経に流れるハッピーなニュースも、今までと変わらずに、報道される。
年の瀬の忙しない空気も相まって
なんだか変に眠れないので
ちょっとそんな人たちのことを、思い出す。

最初に、亡くなったと聞いたのは
人づてに、何年も経った後に。
私がまだまだぺーぺーだった頃に
生まれて初めて殺意と思える視線を向けられた人だった。

初めて、葬儀に参加したのは
年に一度ご一緒していたあの人。
たまに地元の電車ですれ違ったから、
いまだに、背格好の似た人がいると
もしかして、なんて思ってしまう。
優しい笑顔のあの人。

決まっていた仕事の直前に亡くなられたあの人は
未だになんだか信じられなくて
今でも軽口を叩きにひょっこり現れそうな気がしちゃう。
行こうと思えば行けたのに、
葬儀に参列しなかったせいも、あるだろうな。

アフレコでご一緒させていただいたベテランさん、
訃報の折には、
撮らせてもらった写真の入ったスマホを水没させたことを悔やんだっけ。

亡くなったんじゃなくて
この業界を離れていった人だったら
もっといる。
怪我をされてそれを余儀なくされたあのお兄さんも、
人生の決断として終止符を打ったあのヒロインも、
まだあの子達とつるんでくれてるかわいいあの子も、
ほかにも、たくさん、たくさん、いる。

何年も前のあの現場、
いつしか業界を離れていった共演者たちの名前は、驚くほど思い出せないのに
まるで昨日のことのように、思い出せる断片がいくつもある。
私は制作さんだから、
お仕事には酸いも甘いもあるから、
どうしてもすべてを手放しで素晴らしいとは言えない側面もあるけれど
それでも
学ばせてもらったことがものすごく大きかった。
頭のいい彼は、すごくそれとなく触れていた。
真面目な彼女は、きちんと悲しんでお悔やみを言っていた。
現場をまとめてくれたあの人が、思いの外ダメージを受けていて、あの頃、あの言葉にたしかに救われた彼女がいたことを、私は思い出している。

これからもきっと
私の手の届かない場所で
私のことなんて忘れた人々が
永遠の夜に旅立つのだろう。
時は止まらないから
私は時々、
私が思い出せる人のことを、思い出そう。